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経済財政運営と改革の基本方針2024(原案)から読み解く次年度の予算

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経済財政諮問会議は、日本政府が経済政策や財政運営について議論して、重要な政策決定を行うための会議です。
ここで政策方針を決めたり、予算の方向性を決めたりといったことが行われます。

諮問会議で決められた1つの成果物として「経済財政運営と改革の基本方針(骨太方針)」があり、この中で次年度予算の方向性が示されるため、中小企業診断士としては確実に読み解いておきたいです。
そして、2024年6月11日に「経済財政運営と改革の基本方針(骨太方針)2024」の原案が発表されました。
この内容をもとに6月中に閣議決定され正式な内容として公表されますが、原案から大幅な修正はされないと思いますので、今回は原案をもとに、今後の中小企業施策について読み解いていきましょう。

資料は以下から参照できますので適時ご確認ください。
内閣府:第8回会議資料:会議結果 令和6年

人手不足への対応

まずは以下を確認ください。

(1)人手不足への対応
幅広い業種に対し、簡易で即効性があるカタログ型の省力化投資支援を行う。事業者それぞれの業務に応じたオーダーメイドの省力化の取組を促進する。その中で、既存補助事業の早期執行及び運用改善に取り組む。
運輸業、宿泊業、飲食業を始めとする人手不足感が高い業種において、AI、ロボット等の自動化技術の利用を拡大するため、業界団体による自主行動計画の策定を促す。それらの業種において導入が容易なロボットについて、ハード・ソフト両面の開発を促進する。
引用:経済財政運営と改革の基本方針2024(原案) P9

6月下旬からいよいよ公募がスタートする「省力化補助金」。
引き続き、省力化は中小企業支援の大きな目玉になっています。
これまで中小企業支援の大きなテーマは「生産性革命」でしたが、「省力化」というキーワードに置き換わりました。
記載にある通り、カタログ型とオーダーメイド型の2つの軸は変わらず実施されるとのことなので、2024年補正予算において「ものづくり補助金(オーダーメイド型)」は継続して公募されるものと想定されます。

蛇足ですが、記載の中に「既存補助事業の早期執行及び運用改善に取り組む」とあるので、現状のカタログ型については政府も大きな問題があることは認識しているようです…
早く登録カテゴリーの幅を広げて、多くの中小企業・小規模事業者が活用できるようにして欲しいものです。

中堅・中小企業の稼ぐ力への支援

続いては以下を確認ください。

(2)中堅・中小企業の稼ぐ力
成長市場に進出しようとする者の事業再構築、新製品開発や新市場の開拓、イノベーション創出、DX・GXの取組を促進する。サイバーセキュリティ対策、インボイス制度への対応を支援する。
引用:経済財政運営と改革の基本方針2024(原案) P9

この記載からは「再構築補助金(成長分野進出枠)」「ものづくり補助金(製品・サービス高付加価値化枠)」「IT導入補助金」については、引き続き何らかの予算措置が行われると想定されます。
来年の補助金の行方は不透明感がありましたが今回の発表から0になることはないわかりました。
次年度の補助金の予算が組み込まれる2024年の補正予算については、例年であれば秋口から話題に出てくると思いますので、10月・11月頃に答え合わせをしてみたいと思います。

支援機関と支援ニーズをマッチングするプラットフォーム運用

続いてはこの一文。

中小企業に対する支援機関や金融機関等による能動的な支援を促すため、2024年度中に、企業情報やその支援ニーズを集約したマッチングプラットフォームの運用を開始する。
引用:経済財政運営と改革の基本方針2024(原案) P9

企業の支援ニーズと支援機関とのマッチングプラットフォームの立ち上げを行うようです。
公的なコンサルを受けたい企業とコンサルを提供したい支援者のお仕事マッチングみたいなものになるのでしょうか。
そうなると中小企業診断士の営業活動の1つとして活用できそう!と思われるかもしれません。
が、国が作るマッチングプラットフォームで正直うまくいったものを個人的にはみたことがありません、、、、かつて「ミラサポ」も企業と支援者のマッチングを想定して作られましたが、全く盛り上がらずサービス停止になっていきました。
今回のマッチングプラットフォームがどのようなものになるのか、興味深く見守りたいと思います ^ ^;;

事業再生支援

「資本性劣後ローン」の利用促進、中小企業活性化協議会による再生計画策定支援等を通じた経営改善・再生・再チャレンジの支援に重点を置く。
引用:経済財政運営と改革の基本方針2024(原案) P9

405事業や早期経営改善計画の施策は引き続き実施されそうです。
今後は事業再生支援に重点を置くとなってますので、この分野において中小企業診断士が活躍する場面もさらに増えそうですね。

中堅企業への設備投資等の支援

地域経済を牽引する中堅企業や売上100億円以上への成長を目指す中小企業について、関係省庁が連携するビジョンの策定及び地方公共団体や支援機関による支援体制の構築を行いつつ、それらの設備投資、M&A・グループ化等を促進する。工業用水道や産業用地等のインフラの有効活用・整備・強靱化に取り組む。
引用:経済財政運営と改革の基本方針2024(原案) P10

中堅企業への設備投資補助金も継続して実施されます。
すでに「大規模成長投資補助金」として実施されていますが、2024年度補正予算においても予算措置が行われます。
この補助金はもともと2023年補正予算の中で「国庫債務負担含め総額3,000億円」という形で発表されていましたので、2024年以降で引き続きあと2,000億円の予算追加が予定されています。

小規模事業者への支援

最後に「小規模事業者持続化補助金」についても触れておきたいと思います。
まずは以下を確認ください。

小規模事業者の持続的発展に向けて、2024年度中を目途に、商工会・商工会議所の広域連携の促進を含め、小規模企業振興基本計画を見直す。
引用:経済財政運営と改革の基本方針2024(原案) P10

小規模事業者支援について記載されているのはこの1文のみです。
「小規模企業振興基本計画」とは何かというと、2014年10月に定められた小規模企業振興基本法に基づき、小規模事業者の振興に関する施策の総合的かつ計画的な推進のために作られたものです。
こちらは概ね5年ごとに見直しを行うと基本法により定めており、2019年に一度見直しが行われました。
そして、さらに5年が経過したので2024年度中に見直しをすると宣言されています。
これから見直しされる「小規模企業振興基本計画<第三期>」のなかで、今後5年間、小規模事業者をどのように支援するのかの方向性が示されて、そこで持続化補助金はまだまだ必要であると判断されると、引き続き次年度以降も継続されると想定されます。
見直しはなされますが、大きな方向性はそれほど変わらないと思うため、小規模事業者持続化補助金そのものは継続されるのではないかと個人的には考えています。
参考情報:中小企業政策審議会小規模基本政策小委員会(第16回)

まとめ

以上のように、主に中小企業施策に関連するところについて取り上げました。
コロナ禍の時ほど、潤沢な予算が補助金に注がれることはありませんが、単年度予算の中で中小企業対策予算が計上されるものと想定できます。
コロナ前に戻るような感じかと。
例えば、ものづくり補助金は、コロナ禍では3ヶ月に1回公募が行われていましたが、コロナ前の基金化される前は毎年1回もしくは2回の公募が行われていました。
そして、採択率は平均すると40%前後でした。タイミングによってはもっと低い時もありました。
このあたりの歴史的なところは、ぜひ以下の記事も参考にしてください。

皆様の今後の診断士活動において、こうした動きも踏まえてみてください。

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中小企業診断士 2012年04月に中小企業診断士登録、2013年04月に独立。2014年10月に株式会社コムラッドファームジャパンを設立し代表取締役に就任。 会社経営に加えコンサルタントとして中小企業の売上アップを支援するとともに、稼げる中小企業診断士の育成に力を入れる。TACにて中小企業診断士講座の専任講師も担当(2022年に10年間従事し卒業しました。)している。個人ブログ「神保町で働く中小企業診断士&社長のブログ」もすごくたまに更新中!

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