今回のテーマは「認定経営革新等支援機関(略して、認定支援機関)」です。
認定支援機関とは、中小企業に対して専門性の高い支援事業を行う経営革新等支援機関として認定された機関のことで、国が一定のお墨付きを与えた経営コンサルティングの称号といえるでしょう。
中小企業施策を支援する上では認定支援機関でなければできないものもあり、経営コンサルティングサービスを提供する中小企業診断士としては認定を受けたいと考える方も多いと思います。
この記事の目次
認定支援機関になる要件
まずは認定支援機関になるための要件について整理しておきます。
要件としては以下の3つあり、すべての要件を満たす必要があります。
- 税務、金融及び企業財務に関する専門的知識を有していること【要件1】
- 中小企業・小規模事業者等に対する支援に関し、法定業務に係る1年以上の実務経験を含む3年以上の実務経験を有していること【要件2】
- 安定した事業基盤を有していること【要件3】
要件1について
こちらは「中小企業診断士」の資格があれば満たせます。
以前は、「中小企業診断士」の資格では要件1を満たせず、別途支援実績または研修を受ける必要がありました。
しかし、現在は診断士であればいいので、「中小企業診断士」の資格が大いに役立つことになります!
要件2について
要件2では、大きく2つのことが要件として求められています。
「中小企業・小規模事業者等に対する支援に関し、3年以上の”実務経験”を有しているか」と
「中小企業・小規模事業者等に対する支援に関し、”法定業務”に係る1年以上の実務経験を有しているか」 です。
「実務経験」については、比較的幅広く解釈することができます。
中小企業診断士が関わるコンサルティングであれば該当すると言えます。
例えば「中小企業等に対して実施する経営や労務管理に関する相談対応や販路開拓支援、現場改善支援など」です。
独立して3年経過していれば問題ないですし、独立前でも副業として3年間経営コンサルティングやっていればOKです。
コンサル会社勤務で中小企業支援をしていればそれも実務経験としてみなされます。
「法定業務」については、以下のように定義されています。
「経営状況の分析、事業計画の策定支援・実行支援、経営革新計画等の策定支援など」です。
先ほど紹介した「実務経験」の違いでいくと、事業計画策定支援などなんらかの計画策定業務をしたか、単なるアドバイス業務及び計画策定以外の支援にとどまっているか、という形で理解いただくとわかりやすいかと思います。
ちなみに、上記は自己申告となりますので、具体的な成果物や書類などの提出は求められていません。
もし、実務経験や法定業務の経験年数が足りず、それでも早く認定支援機関になりたい!とお考えの方は、中小企業大学校の「実践研修」に参加し試験に合格することで要件を満たすことができます。
研修は2日間×6時間ですので、数年待つよりは研修に参加した方がいいかと思います。
要件3について
要件3については、「申請前3期の事業所得が黒字となっているか」が要件となります。
これがOKであれば、すぐに申請することができます。
これがNOの場合は、「最低でも直近1期の事業所得があるか」が確認されます。
これを満たせない場合は、申請することができません。
つまり、個人事業主・法人ともに1回は事業所得がある状態で確定申告を実施しなければ申請することはできないということになります。
1回でも確定申告をしている場合は、3期分の収支予測を合わせて提出することで認定されます。
ちなみに、申請前3期中に赤字の期が1〜2期ある場合は、赤字の理由も詳細に記載することが求められます。
認定支援機関になると何ができるのか
次に認定支援機関だからこそ関与できることに紹介していきます。
国の補助事業などにおいては、認定支援機関が関与しなければ申請できないものがあります。
そうした申請が認定支援機関になれば単独でできるようになる、というのが1番のメリットになります。
具体的なものとしてどのようなものがあるか。その時々によって変化しますが、この記事を書いた時点では以下のようなものがあります。
引用元:国の補助事業等において必要とされる認定支援機関(経営革新等支援機関)の役割について
【認定支援機関の関与が必須なもの】
- 事業再構築補助金
- 中小企業経営強化税制C類型
- 個人事業者の遺留分に関する民法特例(経営承継円滑化法)
- 個人版事業承継税制(経営承継円滑化法)
- 先端設備等導入計画(中小企業等経営強化法)
- 法人版事業承継税制(経営承継円滑化法)
- 事業承継・引継ぎ補助金
- 経営改善計画策定支援事業(405事業、早期経営改善計画)
- 経営力強化保証制度
【認定使役間の関与は必須ではないが関与できるもの】
- 新型コロナ対策資本性劣後ローン
- 事業承継・集約・活性化支援資金融資事業
- 企業再建資金
- 中小企業経営力強化資金融資事業
※太字は一般的に中小企業診断士に相談の多いもの。つまり仕事になりやすいもの。
このように認定支援機関になることでしか受けられない仕事もあるため、中小企業施策を軸にした経営コンサルタント業を目指すのであれば、その価値は大きいと言えます。
認定支援機関になると仕事の相談は増えるのか
認定支援機関になれば仕事が増えるのか?というと、言わずもがなですがそれだけで増えることはありません。
中小企業診断士の資格を取ったから仕事が舞い込んでくることはないよね、と同じです。
認定支援機関になると認定支援機関の検索ページに掲載されます。
このページに認定支援機関としての支援実績が掲載されるため、この実績を見て事業者様が問い合わせしてくることもあります。
しかし、これから新たに認定支援機関として登録される方にとっては、実績ではすでに活躍されている認定支援機関に勝つことはできないため、どうしても検索システム内では埋もれてしまいます。
認定支援機関の数もどんどん増加しており約38,000社あるため、認定支援機関になっただけで、仕事の相談は増えるというのは正直難しいのが現状です。
とはいえ、認定支援機関になることで事業者様との接点を作り出すことは可能です。
例えば、以下のようなイメージです。
- 認定支援機関として補助金申請支援を売りにして接点を作り出す。(※)
- 早期経営改善計画を使って事業計画策定の接点を作り出す。
- 経営力強化保証制度を使って資金調達の支援を行い接点を作り出す。
※ 補助金申請支援の業界もコロナ禍で市場が一気に拡大し支援者が多数参入した結果、その質も大きく低下しました。質の低い有象無象の支援者との差別化として「認定支援機関」であること、「中小企業診断士」であることはアピール材料にはなります。もちろん「認定支援機関」「中小企業診断士」であっても質の低い支援者はいるので、支援者として質の高い支援ができることは前提です。
といったことができるようになります。
このように、認定支援機関の制度を活用することで顧客接点を作り出すサービス展開ができるようになります。
このようなイメージで活用いただくと制度の有効活用ができるわけです。
まとめ
中小企業診断士の資格をさらに活かすために、認定支援機関になることは顧客接点を作る上では大きなメリットを生み出します。
今は、中小企業診断士であれば要件の1つはクリアできるようになったため、以前に比べると登録はしやすくなりました。
独立診断士を目指すのであれば、同時に認定支援機関の登録もできるよう計画的に準備を進めてみてください。
それでは。
平阪 靖規
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