よく、診断士の活躍のためには「診断士 × 強み」を掛け合わせる必要があると言われます。
例えば、ITに精通しているならば「診断士 × IT」でITサポートを提供し、財務に強ければ「診断士 × 財務知識」で資金調達のサポートを行うことができるでしょう。
しかしこの方法だけでは、実際に仕事を確保することには限界があります。
コンサルティングはアドバイスをすることが本質ですが、そのアドバイスが収益に直結するわけではありません。
ここで必要なのが、もう一つの切り口です。
ではその切り口は何でしょうか。
この答えには、我々が相手にする顧客のことをもう少し考えなければいけません。
私たちが中小企業診断士が相手にしているのは「中小企業・小規模事業者など」の経営者です。
共通して言えることは1人で何でもやっていて、日常業務以外に何かをやるにも時間がない、という点です。
そんな状況の中、中小企業診断士から「もっとこうすればいい!」「こんなことをやればうまく!」と言われて、本当に実現できるでしょうか。
事業者様から見れば、ただでさえ忙しい中でこれ以上タスクを増やされ、できるかどうかわからないようなことにお金を払う気持ちになりますでしょうか。
答えは「No」です。
単にいいアドバイスをしたからと言って仕事につながるわけではないのです。
また、もう1つ競合の存在も意識する必要があります。
中小企業診断士にとっての競合は「公的機関」です。
「公的機関」は中小企業診断士が働く場所でもあるので、その点ではパートナーになりますが、一方で競合という立ち位置にもなるわけです。
事業者様は公的機関に相談に行けば無料で様々な経営的なアドバイスをもらうことができます。
例えば、補助金申請においては、申請書の書き方をアドバイスしてもらったり書いた内容をチェックするだけなら無料で丁寧にやってもらうことができます。
そうした中で、わざわざ1人の中小企業診断士にお金を払ってまで仕事の依頼をしてくれるでしょうか。
ここで仕事獲得の鍵になるのは「アウトソーシング」です。
つまり、忙しい経営者の手・足となって実務を代行するということです。
例えば、補助金申請であれば、補助金のアドバイスにとどまらず、経営者が考える事業計画を文章に落とし込むところまで行う。
Webサイトのリニューアルであれば、マーケティング的視点で改善点だけを挙げるだけでなく、実際のサイトリニューアル作業まで引き受けるのです。
単にアウトソーシングだけを請け負うと価格勝負になりますが、コンサルティング、つまりみなさんが持つノウハウも一緒に提供することで、アウトソーシングの価値も高まり、高単価で仕事を受託することができるようになります。
つまり、キャッシュポイントは「アウトソーシング」であり、「コンサルティング」は「アウトソーシング」の価値を高めるツールとして利用するのです。
先ほど紹介した「公的機関」は原則「アウトソーシング」を行いません。
口は動かすけど、手は動かさない。これが公的機関のスタンスです。
ですから「アウトソーシング」をサービスに組み込むことで差別化は十二分に可能です。
最近はITシステムの発達により小規模事業者に対してもアウトソーシングサービスを提供しやすくなりました。
また人手不足もありアウトソーシングのニーズも高まっています。
これは中小企業診断士にとって追い風となり、私たちの「コンサルティング」×「アウトソーシング」のアプローチにより、新たな市場を切り開いていく大きなチャンスです。
もしも皆さまがこれから独立を目指す中小企業診断士であれば、サービス設計の段階から「コンサルティング」の専門知識と「アウトソーシング」の実務支援を組み合わせることを心がけましょう。
この二つの要素を融合させることで、顧客にとって代替不可能なパートナーとなり、持続可能なビジネスモデルを構築することが可能になります。
独立後も、ただのアドバイザーではなく、経営者の真のパートナーとして共に働く姿勢を示すことが、信頼関係を築き、継続的な仕事につながる秘訣です。
そして「アウトソーシング」の提供は、時間が限られている経営者にとって大きな価値となり、公的機関では得られないサービスとして高く評価されるでしょう。
今後も中小企業診断士は、変化する市場の中で柔軟に対応し、新たなサービスを創造していく必要があります。
そのためにも、「コンサルティング」×「アウトソーシング」は非常に強力なツールとなり得るのです。この組み合わせを活かして、独立に向けた第一歩を踏み出し、中小企業の強い味方としてそのキャリアを築いていきましょう。
平阪 靖規
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